晩冬の黒潮観測: 白鳳丸KH-25-1航海

黒潮は大量の熱・栄養塩・卵仔魚を輸送し日本に海の恵みをもたらすとともに、北太平洋の気候や海洋生態系に大きな影響を与えます。黒潮域で強化される乱流やそれが物質循環や水産資源にどのような影響を与え得るかを明らかにするため、白鳳丸KH-25-1航海(課題名「冬季黒潮での乱流と熱・栄養塩・稚仔魚輸送過程」、主席研究員:安田一郎・東京大学教授)が2025年2月8日~3月6日に実施されました。

ハビタブル日本のA01-1班と基盤研究A「地上・衛星高頻度リモートセンシングによる海上水蒸気量3次元分布推定システムの開発」(研究代表者:吉田聡・京都大学准教授)もこの航海に参加し、冬季に海上の水蒸気量が黒潮によって受ける影響を調べるための観測を行いました。本航海ではラジオゾンデによる高層気象観測のほか、直上の水蒸気量を推定できる小型マイクロ波放射計を用いた観測などを行いました。

冬季のため時化であまり観測ができない可能性も懸念されましたが、幸い航海日程中は比較的穏やかな海況が続き(もちろん時化で退避することもありましたが)、ほぼ計画通りの観測を遂行することができました。ただ、本航海のメインターゲットだったイワシがほとんど採れなかったのは残念でした。(2025年4月 川合義美@A01-1)

航海中盤頃の海面水温と航路(実線)。蛇行していた部分がちぎれて大蛇行が終わった? 航海後、また大蛇行状態に戻ったようです。
乱流計とウィンチと主席の安田一郎先生(右)。航海早々、ウィンチに不具合が発生しましたが、機関部の船員さんが直してくれました。機関部すごい(撮影:東京大学・柳本大吾さん)
ヘリウムを充填したバルーンでラジオゾンデを飛ばします。冬季はジェット気流が強いため、対流圏上層の風速が80 m/sを超える(時速約300㎞以上!)ことも珍しくありませんでした。(撮影:九州大学・安藤雄太さん・東京大学・柳本大吾さん)
ニューストンネットを曳くところ。本命のイワシはほとんど見つからず・・・。
水中グライダー。アルゴフロートと違って狙った方向に移動させながら観測することができます。
東シナ海にはこんな流れ藻がいっぱい浮いていました。イヤな予感が・・・。
こんなことになりました。無事に回収できてよかった。