これまでの地球温暖化で大雪が強まっている!?
地球温暖化にともなう気温上昇により、積雪の減少、海氷面積の縮小、氷河の後退など、雪氷圏の変化が地球規模で観測されています。日本においても、多くの地域で長期的な積雪の減少傾向が見られ、暖冬年にはスキー場の営業が困難になるなど、メディアで取り上げられる機会も増えています。
しかし、こうした傾向とは対照的に、近年でも強い降雪がしばしば発生しています。たとえば、2021年(令和3年)12月17日から18日にかけての降雪では、札幌や小樽で24時間降雪量が50cmを超える記録的なドカ雪となりました(図1)。このような降雪は、地球温暖化の影響を受けていたのでしょうか。

この問いに答えるため、我々は機械学習を用いて膨大な気候シミュレーションのデータベースから、当日と類似した気象条件の日を多数抽出し(図2)、詳細な分析を行いました。その結果、このような気象条件下では、北日本周辺の大気下層の気温は温暖化の進行により上昇している一方で、中層の気温はそれほど変化していないことが判明しました。すなわち、大気の中層から下層にかけての鉛直構造が温暖化によって不安定化していることが示されました(図3)。


さらに、気温の変化量に加えて、水蒸気量などの諸気象要素も調査し、それらを高解像度数値モデルの境界条件として設定して、雪雲や降雪の詳細なシミュレーションを実施しました。その結果、2021年の事例において、札幌を含む北海道各地の降雪量が地球温暖化の影響により10〜20%程度強められていたことが明らかとなりました(図4)。

本分析により、(1)地球温暖化が既に大雪に影響を及ぼしていること、(2)その影響の程度は降雪をもたらす気象条件や地域によって異なることが示されました。本研究で開発した手法は、世界各地で深刻化する大雪・大雨・熱波などの極端気象に対する温暖化の影響を定量的に評価する上で有効であり、極端気象のメカニズムの理解を深めるとともに、地球温暖化対策の推進にも貢献することが期待されます。
この研究の詳細は以下の論文をご覧ください:
Tamura, K. and T. Sato, 2024: Evaluating how historical climate change affected a heavy snowfall event in northern Japan in mid-December 2021 using two pseudo global warming methods. Journal of Geophysical Research – Atmosphere, 124, e2024JD041553, doi:10.1029/2024JD041553.
(2025年9月 佐藤友徳@A03-8)