海面付近の有光層での植物プランクトンによる有機物の生産と、有光層およびその下のトワイライトゾーンでの有機物の分解は、海洋の循環とともに、大気・海洋間のCO2交換や海洋生物資源の豊かさをコントロールする重要なプロセスである。しかし、その実態や、生産に必要な栄養塩供給のメカニズムは未だ解明されていない。これは、人工衛星では計測できない海面下の船舶による観測データの時間・鉛直解像度が圧倒的に不足していることに起因する。本研究課題では、
- 世界有数のCO2吸収海域である黒潮続流周辺海域に、生物地球化学センサー付プロファイリングフロートを展開し、2年半にわたり高い時間・鉛直解像度の観測を行う。水温・塩分に加えて、溶存酸素・pH・クロロフィル蛍光・後方散乱のセンサーを搭載したフロート3台、溶存酸素センサーを搭載したフロート1台、溶存酸素・クロロフィル蛍光・後方散乱のセンサーと乱流計を搭載したフロート1台の計5台で観測を実施する。
- あわせて、東京海洋大学練習船「汐路丸」(東経141.5度線)や気象庁海洋気象観測船「凌風丸・啓風丸」(東経137度線他)などの船舶により栄養塩や乱流を含む高精度の多項目観測を実施する。【A02-5・A03-7班との連携】
- これにより生物生産・分解の季節変化や鉛直変化を高解像度で明らかにし、大気海洋間の物質フラックスや海流系も考慮した統合的解析により、生産に必要な栄養塩の供給プロセスを調査する。【A01-1・A02-5・A03-7班との連携】
- さらに、観測から得られた知見にもとづいて、数値モデルでの生物生産・分解、および大気海洋CO2交換過程の再現性を評価し、その向上を図る。また、生物地球化学データの同化手法の開発を進める。【A02-6班との連携】
本研究課題は、CREST海洋カーボン「アルゴが解き明かす亜熱帯モード水のCO2吸収・貯留機構」、および東北大学・海洋研究開発機構変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)で実施予定の生物地球化学フロート観測とも連携して、観測・研究を推進する。