中緯度における大気の持続的な高温や低温を引き起こす自然変動は偏西風の北偏や南偏である。これらはよく、大陸・海盆規模さらには半球規模の偏西風蛇行の一部として現れ、広域の海洋熱波・寒波発現とも関わる(図)。大陸内部の乾燥気候下で起こる熱波や寒波とは異なり、島嶼・大陸沿岸や海上の島嶼・大陸沿岸や海上の表面気温は、大気より遙かに大きな熱容量をもつ海水の温度に強く束縛される。このため、上空の大気循環変動が日本を襲う熱波や寒波を引き起こすメカニズムの理解は、大気海洋相互作用やフィードバック過程の理解なくしてはありえない。本課題は大気と海洋の熱波・寒波を大気海洋結合システムの変動の顕在化と捉え直し、その時空間的特性、内部フィードバックメカニズム、季節スケールの予測可能性、 地球温暖化に伴う変容を明らかにする。
- 東アジアの島嶼・沿岸地域で起こる熱波や寒波の特性を、大陸内部の乾燥気候下で起こる熱波・寒波と対比しつつ調査する。中緯度偏西風蛇行を始めとした大気循環変動が海洋と相互作用しながら地表気温・海面水温を変えつつ時間発展していくさまを明らかにし、メカニズムを探求する。
- 大気変動に強制された海洋偏差が持続・広域化しながら、季節あるいは年をまたいで大気熱波・寒波の発生確率に影響する様子を明らかにすることで、⻑期予測可能性を探究する。
- 大規模循環変動や大気海洋相互作用過程が温暖化に伴って過去から未来へとどのように変容するかを調査する。
以上の課題に、近年整備が進む大気海洋結合モデルの大規模シミュレーションデータと観測データを組み合わせた解析研究により取り組む。